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「空き家率50%超なのに住宅不足」を解決したい。熱海の不動産会社が提案する、新しい住まいのかたち

マチモリ不動産/熱海から新しい住まい方をつくる不動産

「マチモリ不動産」は、熱海の中心市街地をメインに賃貸物件のリノベーション企画からディレクション、客付けや物件管理を行う不動産会社です。

代表の三好明さんは、東京の不動産管理会社に勤めながら熱海のまちづくりに関わり始め、2015年に移住。2019年3月にまちづくり会社machimoriから不動産事業をスピンアウトさせました。

現在、熱海の空き家率は52%を超えていますが、その一方で「住める物件がない」という慢性的な住宅不足も生じています。こうした住宅問題に対し「まちづくり会社から生まれた不動産会社だからこそできることがある」と三好さんは話します。

半分が空き家なのに住宅不足が起きるわけ

マチモリ不動産が主に取り扱っているのは銀座町から昭和町、和田町までを含む、熱海銀座から歩いて15分圏内の賃貸物件です。

熱海の中心地と言われるエリアでさえ「風呂なしトイレ共同」などの古くて設備が十分でない築古物件が多く、古い状態のまま貸し出されていることも少なくありません。ましてや、市場に出回らないで放置されている空き物件も多いそうです。

「借り手のニーズは最低でも水回りがきれいなこと。ただ、1Rの物件をきちんとリフォームすると200万円ほどの費用がかかる一方で、オーナーさんからすると投資が回収できるのか、いい人が住んでくれるのかが見えません。『だったら貸さない方がいい』と、空き家のままにしておくケースが増えているんです」

その結果、市内にある物件の半分以上は空き家にもかかわらず、住める物件がない状況に陥っています。三好さんはこの問題を、まず借り手を見つけ、その人のライフスタイルに合ったリノベーションを施すことで解決しようとしています。

「従来のやり方では時間の経過とともに物件価値はどんどん下がっていきますが、ニーズに合わせてリノベーションすることで、物件価値を上げていく方法があるんです。
これまで、年数が経てば物件価値は下がるしかないと思っていた不動産オーナーさんに新たな選択肢を提示し、一緒に借り手が求める住環境を整えていきたいと思っています」

「空き家を埋める」ではなく、「まちの価値向上」が目的

現在マチモリ不動産が手がけた物件は3件。どれも情報を公開する前に借り手が決まっています。

三好さんは「リノベーション前の物件しかない状態で借り手と不動産オーナーをつなぐことができるのは、まちづくりで培ったリレーションがあるからこそ」だと言います。

古築物件「寿し忠ビル」の一室をリノベーション。都内から熱海に移住した男性のリクエストから、おしゃれなブルックリンテイストの部屋が完成しました。

「machimoriが運営するゲストハウス『MARUYA』やコワーキングスペース『naedoco』の利用者など、まちづくりで生まれた接点を活かして客付けしています。お問い合わせを受けて一緒に物件を探し、大家さんとも相談しながら、住む人に合わせたリノベーションをした上で貸し出すという流れですね。
マチモリ不動産のコンセプトに共感し、熱海のまちに魅力を感じてくれている方を客付けできること、まちづくりを通じてオーナーさんと信頼関係を築けていることを強みとしています」

ゲストハウス「MARUYA」(写真上)とコワーキングスペース「naedoco」(写真下)

マチモリ不動産が目指すのは、単に空き家や空室を埋めるだけでなく、物件のリノベーションによってビルやまち全体の価値を向上させていくことです。

「machimoriが進めてきたリノベーションまちづくりは、言い換えるとエリア価値の向上。場作りや創業支援など、これまで5年後、10年後も主体的でクリエイティブな人たちに選ばれ続けられるような仕掛けをつくってきました。マチモリ不動産が進める賃貸物件の再生による資産価値向上とは、根幹でつながっています」

熱海に来たから生まれた「まちごと居住」のアイデア

三好さんは、マチモリ不動産の取り組みを通して、まち全体を一つの家に見立てる「まちごと居住」というライフスタイルを提唱していることも特徴的です。

「高校時代に、留学先のカリフォルニアで広くて豊かな住環境を目の当たりにして以降、日本の住環境にコンプレックスを抱いていました。寝室やリビング、庭も広いカリフォルニアの住居に対し、都内の実家は狭く、側を通る線路のせいで電車が通るたびに揺れる環境でした。その環境がストレスで、日本の住環境を変えたいとの思いから不動産の仕事を志したんだと、熱海に来て思い出したんですよね。
このまちには豊かな自然や温泉、人間関係がある。まち全体を使えば、カリフォルニアよりも豊かに暮らせるんじゃないかって、『まちごと居住』のアイデアがふと生まれたんです」

マチモリ不動産で物件を借りた人が、まちなかにリビングやお風呂、ワークスペースなどを複数持ち、好きなときに好きな場所を使えるようにしようという構想のもと、利用可能施設を順次増やしていく予定です。

現時点で使えるのはコワーキングスペース「naedoco」のみですが、今後さまざまな施設と連携することで、暮しを楽しむとともに、関われるコミュニティや居場所を見つけていって欲しいとの思いがあります。

熱海を多様な人が行き交うまちにしたい

「熱海に住みたいと考える人たちは、何かを始めたいとか、ライフスタイルを意識して暮らしたいというニーズを持っている人が多いですが、それだけではなく、なんとなく東京で働き続けることに疑問を感じている人にも利用してもらいたい」と三好さんは続けます。

「今でこそ会社の代表になっていますが、もともとやりたいことがあるタイプではなく、自分には特別なスキルがないとずっと思っていました。でも漠然と東京を出たいと思って熱海に来てみたら、自分が当たり前のようにやってきた不動産管理のスキルをありがたがられたんですよね。本当に嬉しかったし、このまちでやりたいことややりがいが見つかり、人生が変わってしまったんです」

「熱海にはサラリーマン、自営業、フリーランス、二拠点者、移住者、複業している人など、多様な人がいます。このまちの人たちが僕にできることを教えてくれ、さまざまな刺激や役割をくれたから、自分はここにいていいんだと思えました。
マチモリ不動産のサービスを通じて、価値観に影響を与えてくれる人に出会うきっかけ、ライフスタイルを考えるきっかけの一つになりたいと思っています」

今後のまちづくりのビジョンを聞くと、「僕に影響を与えてくれた熱海の人々への恩返しとして、ここを多様な人が行き交うまちにしていきたい」と答えます。

熱海に興味を持つ人に住環境を提供し、移住者に「まちごと居住」で自由にまちと関わっていってもらうことで、もともと熱海に住んでいた人の生活もさらに楽しくしていく。そして同時に、「熱海の不動産オーナーの意識変化も促していきたい」と言います。

「カスタマイズ賃貸の第一人者でもある大家の青木純さんが言っていた『大家はまちの採用担当者』という言葉がすごく好きなんですよ。大家さんは誰が居住者、テナントとして入るか決める立場ですよね。自分がまちにどういう影響を及ぼしているかを考え、大家さん自身が変わってくると、まちも変わってくると思います。人の意識にまで変化が生まれていったらいいですね」

取材・文:福田さや香、写真:栗原洋平(人物)、岡田良寛(建物)

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PROFILE

株式会社マチモリ不動産 熱海から新しい住まい方をつくる不動産

株式会社マチモリ不動産
担当者:三好 明(代表取締役)
住所:静岡県熱海市渚町5-4 大舘ビル204号室
Tel:0557-83-1551/080-4132-6562
Mail :info@machimori-fudosan.jp
Web: https://machimori-fudosan.jp/
設立:2019年3月18日
事業内容:不動産プロデュース業、サブリース業、賃貸管理業、買取再販業、不動産仲介業

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