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会社員・複業・大学院生の三刀流で寝られない時もある。それでも地域×複業を続ける理由

熱海のまちづくり会社で複業する、佐々木さんの働き方

都内でビジネスパーソンとして働きながらも、熱海で複業もこなす。さらには大学院に通いながら研究に没頭する…。そんな“欲張り”とも思える働き方を実現しているのが佐々木梨華さん(31歳)です。「2年前に本業1本だった頃と比べると、状況は大きく変わりました」と話します。

三刀流のキャリアを重ねる佐々木さんは、意外にも「計画的にキャリアを考えているわけではなく、気づいたらこの状況になっていた」そうです。

現在の働き方やライフスタイルに至ったきっかけ、そして実際にどのような仕事をしているのかなど、話を聞きました。

偶然見た複業求人が、まさにやりたいことだった

佐々木さんは現在、一般社団法人RCFで企画やプロジェクトマネジメントなど、コーディネート業をフルタイムでこなしながら、熱海の企業「machimori」で営業の複業をしています。

machimoriは熱海のまちづくりを担い、ゲストハウスやコワーキングスペースの運営に加え、2020年からは熱海の社会課題やまちづくりのプロセスを人材育成や研修として提供する、企業研修プログラムを始めました。

佐々木さんが関わり始めたのは2019年秋のこと。当時machimoriが企業研修プログラムを開発するにあたり、主に首都圏企業のクライアントを獲得する営業を必要としていたのがきっかけでした。machimoriの複業求人に出会った時は、「まさに自分のやりたいことだと思った」そうです。

「岩手県出身で、3.11以降、東北にさまざまな企業や団体が支援という軸で介在する様子を見てきました。そうした動きの中で、地域における個人や企業の関わり方に興味を持つようになりました。

最初は『地域課題のような答えが見つかりにくいものに取り組むことは、企業側の人材育成につながるし、地域にとっても人材育成や事業のチャンスになるのでは』と漠然と考えていました。

ただ、それを実現するためには手間暇もかかるし、そもそも受け入れてくれる地方がないと始まりません。machimoriはまさにそうした事業を、地域側から行っていました。この仕事を通して、自分の考えや仮説を深めていけると思ったんです」

NECの研修を獲得。そこで見えてきたもの

佐々木さんが複業を始めた翌年2020年には、NEC(日本電気株式会社)をクライアントに約5ヶ月にわたるオンライン研修を実施しました。企業側の反応に、一定の手応えを感じたと言います。

「普段の仕事の進め方として、特定の顧客や案件上のキーパーソンがいて、そのお客さまの話を聞いて解決策を提案していくケースが多いそうです。ですが、地方の課題は一枚岩ではないので、必然的に話を聞くべき人も多くなる。

そうしていろんな角度から人の話を聞いていくうちに、関係ないと思っていた人の話がヒントになり考えが広がったり、普段とは違うの業務の進め方や物事の解決策に気づいたりと、地域の多様な人たちとコミュニケーションをする価値について実感できたと言ってくれました」

佐々木さんはこれらの手応えを活かし、積極的に新たな案件獲得につなげています。

「研修や人材育成は、最初から相手が明確に『欲しい』と思っているケースは少なく、企業の状況などを聞きながら、先方が気づいていない課題を探って提案していきます。なので、明確な顧客が存在するというわけではなく、基本的にはゼロから営業先を開拓しています。

最近はコロナ禍で初めての方と会いにくい状況ということもあり、machimoriがお付き合いのある企業の方々約250名にアプローチする中で決まったケースもあります。こうした地道な営業は苦ではなく、前職の新人時代に培った飛び込み営業の経験が、今に役立っているのかもしれません(笑)」

本業と複業のバランスは、正直取れていないかもしれない

複業に割く時間は、週に1日、8時間程度。週末や平日の夜に時間を見つけて対応をしたり、本業で半休を取って複業に充てるなどしています。

「正直、本業とのバランスを完璧に調整できているとは言えません。本業の繁忙期やトラブルと重なり、寝られないこともありました」

研修を進める中で、運営メンバーと定期的に打ち合わせを実施。オンラインの時もあれば対面で打ち合わせすることも。

それでも複業を続けているのは、「価値あるものを売っていると思えるから」です。

「前職、研修会社で営業をしていた時に、売れるものを売って会社として業績が伸びたとしても、研修を受けた人や企業にとって、本当にためになっているのだろうかと疑問を持つようになりました。

熱海で提供する、社会課題を題材とした研修は、10年以上も困難な課題解決に取り組んできた土壌があり、人がいる。そこへの尊敬がありますし、価値を感じています。

あとは先ほどお話ししたように、自分がやりたいことを熱海で実現させてもらっているというか…むしろ巻き込んでしまっている感覚もあるので、成果を出したり期待に応えるのは当たり前だと思っています。なので、忙しくても『もう一踏ん張りやろう』と思えているのかもしれません」

と佐々木さんは続けます。

「もともと、地域で研修を実施することは、企業側の人材育成やメリットに加え、それを受け入れる地域側がどのように変わるのか、どんなメリットがあるのか、ということにも関心がありました。それを一から勉強して言語化してみたいと思い、1年前に大学院にも入学したんです。

地方が都心部から人を受け入れるとなると、どうしても大きなプロジェクトや企業誘致、企業移転となりがちですし、そこに期待しがちです。大事なのはその規模などではなく、むしろ受け入れたことによって得る刺激や学び、視野の広がりにこそ価値があるんじゃないか、と。

まだ地域にどのようなメリットがあるのかなどは明確には整理しきれてはいないものの、複業を通してその答えを見つけたいと思っています」

企業研修が、新しい関係人口になる

複業を始めて約1年半、今後の目標として「まずは研修の獲得件数を増やしていきたい」と言います。

「machimoriとして、実績を作り売り上げを立てる意味でも研修事業の案件を増やしていきたいです。それと同時に、研修マーケットの中で、企業の一方的な利だけではなく、地域も個人も組織もみんなが一緒に成長できるモデルを当たり前の存在にしたいと思っています。

この複業を通して私にとって熱海はふらっと立ち寄れる身近な存在になりました。関係人口のひとつとして研修があると、観光だけではない熱海の活用の仕方や可能性が生まれるような気がするんです」

本業だけの生活から一変、複業と大学院との三軸で活動をしている佐々木さんは、今後のキャリアビジョンをどのように考えられているのでしょうか。

「私自身は長期的なキャリアビジョンは考えていません。考えたとしても1年先までくらいですね。転職も複業も大学院も、その時『これだ』と思ったものを選んで、今の生活や働き方になっています。

新しいことを始める時の心境って、基本ネガディブなことは考えず、楽しみやワクワクといった希望しかないんです。私にとっては新しいことを始めることが人生においてモチベーションやエネルギーにつながるので、これからも『これだ』と思うものを常に選択していけたらいいですね」

取材・文:園田もなか、写真:岡田良寛

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PROFILE

佐々木梨華

岩手県久慈市出身。人事・研修コンサルティング会社を経て社会事業コーディネーター集団の一般社団法人RCFに入社し、人材や組織の側面から地域課題・社会課題を解決する事業を手掛ける。熱海では、まちづくり会社machimoriに複業として参画。研修事業のプログラム開発や首都圏の企業との連携推進、営業を担当。2020年4月からは法政大学大学院政策創造研究科に入学。本業・複業・研究を通して、地域課題・社会課題を題材とした持続可能な人材育成産業の創出を目指している。
(佐々木さんが着用しているmachimoriが手がけるTシャツはこちらから購入できます)

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