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複業メンバーのおかげでようやく社長になれた。“街のため”以上に大切にしたいこと

複業メンバーを採用した、マチモリ不動産のその後

「マチモリ不動産という会社にとってターニングポイントになった1年だった」

2021年をそう振り返るのは、同社代表の三好明さんです。マチモリ不動産は、熱海のまちづくり会社machimoriの不動産事業をスピンアウトする形で2019年に創業しました。

その後、このCIRCULATION LIFEを通して「空き部屋リノベーションの設計デザイナー」ほか複業者4名を採用したことをきっかけに、2年で売り上げが約3倍に伸びるなど事業規模は順調に広がりを見せていると言います。

複業メンバーと過ごした1年で、会社及び自分自身にどのような変化が生まれたのか。三好さんに伺いました。

複業で4名のメンバーを採用

マチモリ不動産は、熱海市内のマンションやアパートを中心に、賃貸物件の紹介・リノベーション・借り手探しまでを一気通貫で手掛けています。

「住まいにもっと自由を。」をミッションに掲げ、家の貸し借りの間に入るだけではなく、物件を借りた人が理想の生活を送るための提案までを行っています。

「空いている物件の入居者を探す、というのが一般的な賃貸契約の考え方です。ですが築古物件の多い熱海は、設備が不十分で住みたいと思える部屋が多くありません。

そこで私たちは、まず借り手を見つけ、その人の理想の暮らしをヒアリングし、要望に寄り添ったリノベーションを施してから賃貸する、という方法を取っています」

お話を聞いた、マチモリ不動産代表・三好明さん(写真:栗原洋平)

リノベーションにかかる費用は、すべてマチモリ不動産が支払う代わりに不動産オーナーとは6年間無料で物件が使用できるよう契約、7年目に物件を返却します。

入居者にとっては満足度の高い暮らしが手に入り、オーナーにとっては物件がきれいになって価値が上がる。入居者とオーナーの双方にメリットを生むスキームで、事業は順調に成長しています。

「今でこそビジネスモデルが定まりましたが、もともと私の専門は不動産の管理です。『空き家の多い熱海で賃貸物件を再生し、地域の価値を上げていきたい』という方向性はあるものの、リノベーションの経験や知識不足から、手がまわりきらずに悩んでいました。

そこで、複業という形で『空き部屋リノベーションの設計デザイナー』を募集することにしたんです」

熱海の小さな不動産会社に人が来てくれるのか、という不安をよそに、三好さんの予想を超える多くの応募が届きました。

「設計デザイナーを無事に採用できただけでなく、ありがたいことに事業そのものに魅力を感じて『デザイナーではないが、何かの形でマチモリ不動産に関われないか』という応募もありました。

最終的には設計デザイナー、経営企画、SNS担当など、4名の多様な人材を複業採用することができました」

複業導入で、会社の業績以上に変化したこととは

新しい人材の参画で事業を動かせるようになり、リノベーション案件数は1年間で約2倍に増加しました。2021年には不動産仲介業の免許を取得し、物件の買取り・再販売も開始、既に数件の契約が実現しています。

手がける領域や案件が拡大したことで、2021年8月期の決算には、創業から2年目で初の黒字化が実現しました。

リノベーションを施したマンションの一室。before(上)とafter(下)

複業メンバーが加わったことで大きな転機を迎えたマチモリ不動産。一方、三好さん自身にも変化がありました。

「まちづくり会社の一部門だった時から創業してからも、事業をほぼひとりで担ってきました。会社化しても甘い部分が残っていましたし、行動にも選択にも、どこか自信を持ちきれないままでした。

ですが惜しみなく力を貸してくれる仲間ができ、彼らが事業の可能性を広げてくれたことで、『会社のこれからを、私がしっかりと描き切らなければ』『メンバーにちゃんと還元したい』と、ようやく経営者としての覚悟が生まれたんです」

2022年以降は「不動産仲介」「建物管理」「管理・仲介物件のリノベーション」の3部門に力を入れていく、という方針を定めています。

この方針を定めた理由は、複業メンバーの参画をきっかけに「『彼らの力を最大限生かせる事業とは』『やりがいを持って働いてもらえる事業とは』という要素が判断基準に加わったから」だと三好さんは続けます。

「これまで、まちづくり会社から派生したバックグラウンドから、熱海の空き家率や人口減少など、課題に対するアプローチとまちの再生に優先順位を高く置いてきました。街の活性化という文脈で見ればやるべきことやできることも多数あり、求められたらあれもこれも、と手を広げすぎていました。

私ひとりなら、街のために手がまわる限り対応する形でよかったかもしれません。ですがチームが生まれた以上、メンバーに対して会社は何ができるのか、仕事にやりがいを感じてもらえるか、という点がより大切な判断軸になりました。

その判断軸を最優先に、事業成長と同時に増えつつあった部門をいったん整理したところ、本来のミッションに最も近い3部門に絞り込むことになったんです」

住まい方も働き方も、選択肢が広がってほしい

現在の複業メンバーには、都内に生活拠点を置きながら完全リモートでマチモリ不動産の正社員にシフトする人や、本業を持ちつつ同社の取締役となる人も誕生しています。

ほかにも出産や育児などライフステージの変化に合わせて、担当業務を柔軟に変えながら関わり続けるメンバーなど、一人ひとりの個性に合った、自由で変化に富んだキャリアを形成しています。

三好さんと複業メンバー4名、そしてマチモリ不動産スタッフの皆さん

そもそも「複業」という働き方をマチモリ不動産が導入した背景には、三好さん自身が複業で熱海に関わり始めた、というきっかけがありました。

「東京に住むサラリーマンで、起業する気もなかった私が、プロボノから複業、移住に入社という経緯を経てこの会社をつくることになりました。

そんな過去の自分を投影すると、もし複業のような働き方の自由度が社会にあれば、いろいろな形で地方に関われる人がもっといるんじゃないか、と思うんです」

「住まいにもっと自由を。」という社のミッションは、言い換えると「住まいにもっと選択肢があっていいし、もっとワガママに描いていい」という思いです。リノベーション賃貸はその思いを形にした事例のひとつにすぎません。

「住まいも、働き方も、根っこにある気持ちは同じで『選択肢のある社会になってほしい』ということです。一人ひとりが、自分の心に寄り添ったライフスタイルを実現できるようになれば、シンプルに幸せな社会が実現できます。であれば、選択肢を増やす張本人でありたい」

メンバーと企業の成長を第一に目指す

「『いい物件がなくて困っていたけど、ようやく理想の家に出会えた』。そんな声を聞くのがチームのやりがい」と話す三好さんですが、2021年7月に起こった伊豆山の土石流災害で、改めて街の課題を突きつけられました。

「約1万8000世帯の空き家があると言われている熱海で、住む場所を失った約120世帯の家が見つからない事態が起きました。

耐震化が進んでいないばかりか、すぐ住める状態になっていない空き家が多いのが原因です。これは熱海だけの問題ではありません」

人口減少の課題先進都市と言われる熱海で、マチモリ不動産が空き家問題を解消する先行事例となり、他の地方都市にもこのビジネスモデルを波及させていくためにも、「まずは自分たちの事業が利益を上げることが重要」と、三好さんは言います。

「1社でできることは限られています。同じような思いを掲げる不動産会社が参入し、ゆくゆくは政策としてまちに働きかけていけるくらいにならないと、社会の変化にはつながりません。ここに未来の可能性があると思ってもらうためにも、まずは私たちが事業としてしっかりと利益を上げることを目指します。

また、今のメンバーは一生一緒にいるわけではありません。先々それぞれが納得感を持って違う道を進むためにも、個々の得意領域を生かしながら個人も企業も成長していきたいです」

個人と企業、それぞれの成長がひいてはまちの成長に。マチモリ不動産の目指す未来に向かって、三好さんもメンバーも着々と歩みを進めています。

取材・文:木内アキ 写真:栗原洋平(2枚目)、他マチモリ不動産提供

PROFILE

株式会社マチモリ不動産 熱海から新しい住まい方をつくる不動産

株式会社マチモリ不動産
担当者:三好 明(代表取締役)
住所:静岡県熱海市渚町5-4 大舘ビル204号室
Tel:0557-83-1551/080-4132-6562
Mail :info@machimori-fudosan.jp
Web: https://machimori-fudosan.jp/
設立:2019年3月18日
事業内容:不動産プロデュース業、サブリース業、賃貸管理業、買取再販業、不動産仲介業

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